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コラムタイトル

街歩き(景観と色彩)

桃林に隠れるように点在する民家

亜鉛鋼板で覆った屋根が美しい民家

平成の桃源郷 上中   ~愛知県豊田市上中町~

「晋の太元中、武陵の人魚を捕らふるを業と為す。渓に縁りて行き、路の遠近を忘る。忽ち桃花の林に逢ふ。岸を夾むこと数百歩、中に雑樹無し。芳草鮮美、落英繽紛たり。」で始まる「桃花源記」(作者:陶淵明)が語源とされる桃源郷。要約すれば、「中国、東晋(とうしん)の太元年中(376~396)武陵の漁師が舟で川をさかのぼってモモの花が咲きにおう林に迷い込み、林の尽きる水源の奥の洞窟(どうくつ)を抜け出ると、そこには秦(しん)の戦乱を避けてこの地に隠れ住んだ人々が、漢・魏(ぎ)・晋(しん)と数百年にわたって世の中の推移も知らず、平和な別天地での生活を営んでいた」(日本大百科全書より)
そんな桃源郷を彷彿させる地が愛知県豊田市の上中地区である。白、ピンク、赤の枝垂れ桃数千本が民家を包むように咲き乱れる。「由来は、昭和40年代に地元の住民が植えた約30本が上中のしだれ桃の始まりという。高度成長の中、若者が都会へ出ていくなかでも、花木を愛でることを自分たちの楽しみとして毎年しだれ桃を植え続けてきた。」(案内小パンフ)のだ。
10年程前に初めて訪れたころに山裾に植えられていた苗木も成長し、深緑の植林地にも彩りを添えている。まだ名札のついた苗木も見られ、延々と歴史を刻む様子が伺われる。
亜鉛鋼板で覆った屋根や赤瓦屋根、白い漆喰で覆われた土蔵の壁、庭にはチューリップやスイセンなど草花も咲き競い、訪れる花見客をもてなす。
民家の庭先から漂うみそだれの素朴な五平餅を焼く香りに誘われ、軒下に並ぶウドやコシアブラに手が伸びる。夜の食卓は嬉しい山菜づくしだ。(pdfも是非ご覧ください)

平成の桃源郷 上中.pdf

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色も色いろ

華やかな明るいピンクのアカヤシオ

淡い黄みを帯びたヒカゲツツジ

色も色いろ 第72話 納古山彩る躑躅の競艶

岐阜県加茂郡七宗町上麻生に聳える納古山。標高632.9mとけっして高い山ではないが、周りを遮る山がないため山頂からは東に恵那山から中央アルプス、北には一際高く聳える御嶽、その左には雪を頂いた乗鞍、更に西には真っ白く輝く白山連邦。さらに奥美濃の山々から鈴鹿山系。南に目を転じれば、蛇行する飛騨川の向こうに名古屋駅周辺の高層ビル群まで文字通り360度の展望が広がる。
江戸期には入会地の境界を巡って村同士の争いが絶えなかったという。また稜線を跨ぐ塩の道の標識もあり、歴史に彩られた山でもあったようだ。
3月末に初めてこの山を訪れた折に、山を管理していると思しき方から1週間後にアカヤシオが見頃と教えられ、山道脇のヒカゲツツジの蕾の多さも気にかかり、10日後に再び訪れた。山道に入るとコバノミツバツツジの鮮やかなマゼンタカラーが目に飛び込んでくる。標高を稼ぎ、岩場が連なる場所に差し掛かるとそこかしこにヒカゲツツジである。淡い黄みを帯びた花が寂しげで、如何にもヒカゲツツジの名がぴったりとくる。写真ではほぼ白くしか映らないが、やや緑みの淡い黄色である。
岩場を超え、山頂直下の稜線に出ると、一帯が明るいピンクに包まれた。アカヤシオの群落である。その眩さにうっとりするほどだ。鈴鹿連峰御在所岳はアカヤシオの群落で知られるが、これまでさして興味もなく、アカヤシオより1週間ほど遅れて咲くシロヤシオの盛期に鎌ヶ岳を度々訪れていた。初めて対面したアカヤシオの眩いばかりの色・形に釘付けである。目の前にアカヤシオ、振り返れば御嶽が遠望できる岩場に腰を下ろし、幸せな一瞬(ひととき)を…。
下山時にふと思い当たったのは、コバノミツバツツジは"Winter"。ヒカゲツツジは"Summer"。アカヤシオは"Spring"。これに麓あたりで少し遅れて咲く山ツツジの赤褐色を加えれば、パーソナルカラー4シーズンが揃う。急に街の喧騒に引き戻されたような…。

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山歩(さんぽ)



新緑に清楚な純白の花映える

山歩№74清楚なムシカリの花に惹かれて  ~愛知県瀬戸市 海上の森~

花咲き誇る4月。そんな中にあっても一際心惹き付ける花と云えばムシカリ。別名オオカメノキとも云われる。
我が家からほど近い海上の森では、湿地脇の雑木林の中にひっそりと佇んでいるのに出会える。花季が比較的短い為、被写体として映える姿にはなかなかお目に掛かれない。
名の由来は虫が好んで葉を食すため「虫狩」とされたといわれ、確かに葉に虫食い穴が多い。別名のオオカメノキは、葉の形が亀の甲羅の形をしているからとか。高貴な雰囲気を漂わす花の色形とは似つかわしくない名である。
枕草子には、楊貴妃の、帝の御使ひに会ひて泣きける顔に似せて、 「梨花一枝、春、雨を帯びたり。」と長恨歌より引用しているが、清楚な白い花ならむしろムシカリが似つかわしいと思うのは、私だけだろうか?
樹下にはハルリンドウが、青やピンクの花を…。
  2018年4月1日掲載(2017年4月19日撮影)

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コラムの履歴

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